2008年12月20日土曜日

HAPPY HOLIDAYS 




ブドウ畑のブドウはすっかり葉を落として、長い休眠時期に入りました。


今年はとても寒くて早めに霜がおりたり、ナパの雪がニュースでした。雨の間に明るい太陽が顔をだすと、まだ葉を落としていない町の紅葉が映えて秋のような錯覚にとらわれます。
観光客は減りホテルにはVACANCYのサインも出てようになりました。ワイナリーも建物全体に明かりがついて学校から帰る真っ暗な夜道のアクセントになっていて、漆黒の夜に浮かんでいるように見えます。日本の飾りはピカピカと点滅するものが多いのですが、こちらでは殆ど一つも見ませんのでまるで船が浮かんでいるようにも見えます。

観光客がへったワイナリーや丁寧に対応する余裕があり、レストランは予約に終われず落ち着いて楽しむのには絶好です。(私も本の取材のときは必ず冬に行いました) 

先日、インドのムンバイにあるTAJホテルのテロ事件がありましたが、サンフランシスコのカンプトンホテルはTAJの直営ホテルに変わったので試しに出かけてみました。有名インド人シェフによる料理もインドニュアンスがあるかと期待していたのですが、特にインドらしいところはなく値段だけ5星ホテル仕様でした・・。食後はクリスマスショッピングで混雑する街でホリデー雰囲気を楽しみました。

クリスマス直前になってソノマでも食材店は東京の年末のような混雑です。

2008年11月26日水曜日

ワインメーカーの講義 ブレタノマイセス(馬小屋臭)について

私は合計で10つのワイン関連クラスをとっていますが、その中にProfessional Wine Judgingというワインジャッジングを学びました。そこではワイン判定の仕方が主なのですが、特に興味深かったのはゲストスピーカーとして実際にワイナリーでワインを造っている人からワイン作りや品種の特性を具体的に聞いた回でした。

特に内容が濃かった講義はParadise Ridge WineryのWMであるDan Barwick氏のもの。
ブリティッシュ イングリッシュそのものを使う英国人のワインメーカーも珍しいところです。その中の一つのトピックをご紹介します。

動物香、プラスチック、馬小屋などのニュアンスで、ごく少量ではヨーロッパワインの田舎臭と好意的に判断されることがあるのですが、基本的にはワインに悪影響を与える欠陥要素とされています。この原因の一つがブレタノマイセスという酵母の作用があります。

ブレタノマイセスという酵母は糖分をアルコール発酵せず、フィルターには自分の形を扁平に変えてくぐりぬけて取り除くのが大変なやっかいな酵母です。英語ではRogue Yeast(不良酵母と言い)特にカベルネソービニヨンを好んでくっつきます。とても注意しても時には1年に1樽ほどは発生してしまうとのことです。普通は樽を好み、ワイナリーがすみかと考えられていますが、実は畑からすでに始まっています。必ずブレタノマイセスを発生させているワイナリーは畑に圧搾後の果皮を畑にまくので、それが持ち込まれてワイナリーに常に発生してしまうのが現実です。

現代のワイナリーはどこに行っても常に清潔でいつでも機材を洗っていますが、オゾンは環境にも問題がなく水に溶かして利用すると、この接触ですぐに死んでしまうのでブレタノマイセスの発生を押さえているという興味ぶかい話もありました。

また別の回に触れたいと思いますが、塩素ベースの殺菌消毒はコルクダメジの誘引にもなります。生徒の中には自分でワインを作っている人も多いのでこのテクニックには質問が多くでました。

ワインジャッジのクラスはバックルームという裏方の仕事も学ぶので、必ず1回はブラインドワイン(銘柄を隠したワイン)の準備、ワインサーブ、その他の仕事に参加してこれも成績の一部になります。

2008年10月20日月曜日

オーキーでないシャルドネ   2008年10月

2008年10月

オーキーでないシャルドネ


カリフォルニアのシャルドネは時々あまりのボリュームと樽香りで、いったいこのワインはどんな機会に飲むのだろうと思わせて、私は限界を超えたシャルドネには降参することが多い。そんな中で値段も手ごろな上にエレガントなワインを作っているワインに出会うとうれしい。

Raymond Burr Wineryのシャルドネもそんなひとつ。
2006シャルドネはグリーンアップル、トロピカルフルーツ、柑橘系の香りが、古樽発酵と乳酸発酵のクリーミーな味わいと混じって長いフィニッシュにつづき全体的なボリューム感と香りと味わいバランスが良い。戸外の新鮮な空気は味わいを更に高めてくれた。

畑はドライクリークの斜面にあり、全体に広がる赤っぽい粘土質は水分を保つ。この斜面の畑では保水性がとても重要なキーを果たしている。斜面の畑のおかげで春の霜の被害からも免れ、表面的な水はけは良く、しかし深いところで保水するという構造となっている。畑はいわゆるサステイナブルファーミングやエコ環境保全に熱心にとりくんでいる。移動が多いワインメーカーの中で、フィリス・ズーズニスはこのワイナリーに20年以上もいるおかげで彼女らしいハウススタイルを作り上げている。
 

ドライクリークにあるLambert Bridgeもオーキーでないシャルドネを作っているワイナリーとして紹介したい。こちらも女性のワインメーカーであるジル・デービスは100%フレンチオークの新旧樽を使って発酵、乳酸発酵を行っている。2006シャルドネは複雑さを得るためにブドウを全房プレスして新旧の100%フレンチオークで醸造したもの。梨、りんご、スパイスとかすかで上品な樽のニュアンスが感じられる。オークはタンニンや樹脂香などを取るために熱湯につけて余分な香りを取り除いてから樽を成型するという特注の方式で作られたものを使用している。おかげで、粗い木質的な香りやスパイスはなく、ブドウのアロマやブーケと相まってエレガントが味わいのワインに仕上がっていて美味。

私のサイトが新しくなりました。

2008年9月28日日曜日

プチット・シラー  2008年9月



ちょっと珍しいところで、今日はプティット・シラーのお話。

Petite Sirah 
普通はブレンド用に使われることが多いものの、パワフルでありながらフルーティな単独のワインとしてソノマでは人気が出ている。この品種を特に得意としているところはChristpher Creek Wineryで、手作りで高品質のプチシラーを生産している。ブドウの樹齢は平均40年と古く、小ワイナリーらしく機械類も小ぶりで手作りでワインを作っている。ロシアンリバーとドライクリークの間にあるバナナストリップといわれる場所で、ポケットのように小さな温かい場所で、眩しい太陽が照る一方、斜面にある畑では非常に冷たい風が吹いていて震えるほど。 

古いプチシラーはCane Pruningできれいに剪定されて小さなワイナリーの斜面を取り囲んでいる。ワインは熟成向きで、デカンタすると生き生きとしたブラックベリー、プルーンの香りとしっかりしたタンニンをもち、ブドウがもつ力がグラスから溢れて魅了される。普段飲まない品種であるが、良くできたものは素晴らしい。

2008年8月30日土曜日

授業  2008年8月

授業

ワインコースでの必須クラスの一つを紹介しよう。全体を6~7週間ごとに分けて(1)ソノマ郡のすべて、(2)栽培・醸造、(3)世界のワインの3部構成となっていて、それぞれの専門教授に替わる。

大学にはShone Farmというブドウ畑や商業サイズの醸造施設があるのみならず、多くのワイナリーの協力があって教室の講義ばかりでない実地授業が幾つかのワイナリーで行われた。

ブドウの剪定やトレリス方法は実際に品種ごとに学び、収穫期を迎えているワイナリーはテイスティングルームを閉めたあとも忙しく動いていた。大手ワイナリーでは10月末までフル回転状態。涼しい夜に収穫したブドウを積んだトラックが入り、機械が高速でブドウをクラッシュしている。白ブドウは温度で時間ごとに成分が変化するので日没後に収穫することが多い。  午後7時のLa Crema Winery3期目の世界ワインについては、日本人の私は東京でより多くの世界ワインに接しているので殆どはほかの学生より良く知っているのでここは余裕のA+。

それぞれの単位にリポート、試験、プレゼンの繰り返しで図書館を利用することが多くなった。宿題に読み物が多いので大変(しかし、ワイン関連はすでに知っていることが多いので割合に余裕)アメリカ人の気質をよく考えなかった最初のリポートはナパヴァレーの批判的なことを書いてBをくらう。内容は悪くないのにどうしてと疑問だった。しかし、他の人のリポートを見て、、ああ、そこがポイントね、と理解した!

で、それ以降のリポートではAを獲得。つまり、教授が嫌いそうな自分の意見を強く主張せずに正しい研究(リサーチ)成果に限定して書く。末尾に勉強効果をあらわすリファレンスを最低5個は引用してまとめる。リポートは創造性、オリジナリティもポイントが高いのでインターネットのコピペはマイナスポイントになり、www.turnitinというサイトにもリポートを提出する。このサイトでコピペ率や再利用がないか判断されて教授と生徒に結果が知らされるので、自分の言葉でまとめて書かねばならないので大変ではあります。

2008年7月30日水曜日

学生アゲイン 2008年7月

2008年7月

学生アゲイン

ある日突然の思いつきであることを白状しますが、、、じっくりとカリフォルニアワイン産地での最新状況(生産地、醸造、栽培、ワイン教育、ワインマーケティング)などを知りたいと思ってしまった。個人的な探訪は言うまでもなく、単発の講習やワイナリーとの接触でこれまでに興味ある経験は重ねたものの、多くの生産者も集う現場で本格的に学びたいという好奇心が騒ぎ出した。しかし、そのためには正規学生とならないと受講できない。

私の家から通える範囲のサンタローザJCがもっとも幅広いワイン専門科目をもっていることは知っていたので留学先をここに決めた。もっとも、近いといっても片道50キロはある上に勤労者(殆どワイン関連)が参加できるように夜の6時や7時から3時間という設定で、明かり一つない漆黒のブドウ畑に沿って毎晩の高速運転を覚悟しなければならない。

東京では自分の子供のような年の子供達にまざってTOEFLを受けて、入学許可、学生ビザ取得と正式ルートをたどって学生再開。秋から始まる年度もワイン関連の授業は8月中旬からスタートするので7月後半にソノマに到着。後に学生の厳しい現実を知ることになるが、当初は空いた昼間はゴルフができると甘い計画で学生生活が始まった。

指定された日時にオリエンテーションに行ってみると15人程度の本当に小さなグループで、日本の大学の入学とは大きく異なって少々面食らうが、老若男女が混じった学生から、学生になった理由、目的などを聞いて興味深かった。渡されたパケッジの一番上に置かれた派手な蛍光紙には「今のあなたの努力は20年後に絶対後悔しない。さあ、安全な港から上げ潮に乗って感動と発見の航海に出かけよう」とマーク・トウエインの言葉が書かれて、アメリカらしいポジティブ・スピリット全開。自分の年を省みて20年後に生きているだろうかと疑問をもちつつも、そのメッセージに勇気をもらって、家に戻ると私のスローガンである「ルールを知って無事に楽しく」の隣にそれを壁にピンで留めた。